気になる新刊

【2023年1月】気になる新刊10選

2023年2月11日

はじめに

2023年1月の新刊640冊のなかから、現役文芸編集者の気になる10冊を厳選!
芥川賞候補作3作に芥川賞作家の新刊もあり、純文学が充実したラインナップです!

オススメ作品

京極夏彦『書楼弔堂 待宵』

『姑獲鳥の夏』で衝撃的デビューを果たした重鎮による約6年ぶりの「書楼弔堂」シリーズ第3弾!今作も520ページとボリューミーです。京極ワールドにたっぷり浸れそうな1冊。

こんな人におすすめ

  • 書楼弔堂シリーズが好き
  • 古本屋によく行く
  • 時代小説をよく読む
  • 明治〜大正期が好き
  • 分厚い本に挑みたい

舞台は明治30年代後半。鄙びた甘酒屋を営む弥蔵のところに馴染み客の利吉がやって来て、坂下の鰻屋に徳富蘇峰が居て本屋を探しているという。なんでも、甘酒屋のある坂を上った先に、古今東西のあらゆる本が揃うと評判の書舗があるらしい。その名は “書楼弔堂(しょろうとむらいどう)”。思想の変節を非難された徳富蘇峰、探偵小説を書く以前の岡本綺堂、学生時代の竹久夢二……。そこには、迷える者達が、己の一冊を求め“探書”に訪れる。「扠(さて)、本日はどのようなご本をご所望でしょう——」日露戦争の足音が聞こえる激動の時代に、本と人との繋がりを見つめなおす。

集英社HP

小西マサテル『名探偵のままでいて』

第21回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。「認知症の祖父が安楽椅子探偵となり、不可能犯罪に対する名推理を披露する連作ミステリー」。はやくもSNSで話題を呼んでいます。

こんな人におすすめ

  • ミステリをよく読む
  • 探偵小説が好き
  • 高齢者と暮らしている
  • 介護の仕事をしている
  • 話題作を読みたい

かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は、71歳となった現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。しかし、小学校教師である孫娘の楓が、身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻すのだった!そんななか、やがて楓の人生に関わる重大な事件が……。

宝島社HP

村山由佳『ある愛の寓話』

著者デビュー30周記念作品。「原点回帰にして到達点。」と銘打たれた本作には、〈人〉と〈人ならざるもの〉の愛を描いた6編が収められています。「果てのない愛の神髄」を描いた1冊です。

こんな人におすすめ

  • 純文学が好き
  • 本を読んで圧倒されたい
  • 自分を見つめ直したい
  • 普通の押し付けが嫌
  • 愛について考えたい

原点回帰にして到達点。猫、犬、馬、人形など、異質な存在との交歓によって導かれるカタルシス、圧倒的な熱量をはらんだ作品集です。

文藝春秋HP

鈴木涼美『グレイスレス』

第168回芥川賞候補作。2期連続候補でしたが、今作は選考委員の指示を得られず受賞は逃しました。元AV女優で、今は社会学者でもある注目の作家の2作目。赤と黒のモードな雰囲気の表紙も印象的な1冊です。

こんな人におすすめ

  • 芥川賞候補作を読みたい
  • 純文学が好き
  • 性について考えたい
  • 幻想的な小説が好き
  • 祖父母と暮らしている

デビュー小説『ギフテッド』に続き、芥川賞候補に選ばれた鈴木涼美の第二作。主人公は、アダルトビデオ業界で化粧師(メイク)として働く聖月(みづき)。彼女が祖母と共に暮らすのは、森の中に佇む、意匠を凝らした西洋建築の家である。まさに「聖と俗」と言える対極の世界を舞台に、「性と生」のあわいを繊細に描いた新境地。

文藝春秋HP

第168回芥川賞候補作はこちらの記事でも詳しくご紹介しています!↓

佐藤厚志『荒地の家族』

第168回芥川賞受賞作。著者は仙台在住の書店員。東日本大震災が背景に描かれています。吉田修一さんが選評(『文藝春秋』2022年3月号掲載)で、「読後、胸に熱いものが込み上げてきた。フィクション/嘘が必死にもがいて掴みとった本当がここにはあった」と絶賛する渾身作です。

こんな人におすすめ

  • 芥川賞受賞作を読みたい
  • 純文学が好き
  • 震災について考えたい
  • 東北に縁がある
  • 人生を見つめ直したい

元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か――。40歳の植木職人・坂井祐治は、あの災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。

新潮社HP

第168回芥川賞候補作はこちらの記事でも詳しくご紹介しています!↓

遠野遥『浮遊』

『改良』で第56回文藝賞を受賞してデビュー、『破局』で第163回芥川賞を受賞した気鋭の純文学作家による第4作。高校生が主人公の「ホラーゲーム小説」です。冒頭の20ページが こちら から試し読みできます!

こんな人におすすめ

  • 芥川賞作家を読みたい
  • ゲームが趣味
  • ホラーが好き
  • 退廃的な小説が好き
  • 衝撃を感じたい

高校生のふうかは、会社経営の男の家で柔らかいソファに座り、男の元恋人を象ったマネキンの下、夜毎ホラーゲームで悪霊たちから逃げ続け――。芥川賞受賞作『破局』を超える衝撃。

河出書房新社HP

新川帆立『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』

度肝を抜かれるタイトルに思わず惹かれてしまいます。第19回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した『元彼の遺言状』やドラマ化が話題の『競争の番人』シリーズが人気の注目作家によるリーガルSF短編集です。

こんな人におすすめ

  • リーガルドラマが好き
  • SF小説をよく読む
  • 愉快な気持ちになりたい
  • 法律に興味がある
  • ギャグ漫画が好き

通称:令和反逆六法——。六つのパラレル・レイワ、六つの架空法律で、現行法と現実世界にサイドキック!「命権擁護」の時代を揺さぶる被告・ボノボの性行動、「自家醸造」の強要が助長する家父長制と女たちの秘密、「労働コンプライアンス」の眩しい正義に潜む闇……。痛烈で愉快で洗練された、仕掛けだらけのリーガルSF短編集。

集英社HP

グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』

第168回芥川賞候補作。米国出身で日本語が母語ではない作家による「越境文学」です。平野啓一郎さんは選評(『文藝春秋』2022年3月号掲載)で、「多様なルーツの人々の共存と緊張を技巧的に描い」た作品であると分析しています。

こんな人におすすめ

  • 芥川賞候補作が読みたい
  • 海外にルーツがある
  • 越境文学を読みたい
  • バイリンガルである
  • 親子関係に悩んでいる

何かを追いかけているのか、それとも何かから逃げているのか。父のルーツの言葉、母語の檻、未知なる日本語。父と息子、故郷へのそれぞれの想いが静かに共振する。留学先の日本から、サウスカロライナに帰郷したラッセル。葛の繁茂した庭、南部ならではの湿気、耳に届く哀切な音楽――。青年は、遠くイランからこの地に根を下ろした父の来し方に想いを馳せる。

講談社HP

第168回芥川賞候補作はこちらの記事でも詳しくご紹介しています!↓

宮本輝『よき時を思う』

1947年生まれの大ベテラン作家による、感動の新作長編。作者は 刊行記念インタビュー で、「この小説は、いろんな人生の詰まったおもちゃ箱ですよ。このおもちゃ箱をあけると、いろんなおもちゃが出てきて、たくさんのいい人生があったなと。そういうふうにこの一冊を読んでいただけたら、作者としてはうれしいですね」と語っています。

こんな人におすすめ

  • 大河小説が好き
  • 料理の描写が好き
  • 祖父母と暮らしている
  • 戦争について考えたい
  • 人生を見つめ直したい

いつか、愛する者たちを招いて晩餐会を——。九十歳の記念に祖母が計画した、一流のフレンチシェフと一流の食材が織りなす、豪華絢爛な晩餐会。子どもたち、孫たちはそれぞれの思いを胸にその日を迎える。徳子おばあちゃんは、なぜ出征が決まった青年と結婚したのか? 夫の戦死後、なぜ数年間も婚家にとどまったのか? そしてなぜ、九十歳の記念に晩餐会を開くことにしたのか? 孫の綾乃は祖母の生涯を辿り、秘められた苦難と情熱を知る——。一人の命が、今ここに在ることの奇跡が胸に響く感動長編!

集英社HP

『東大に名探偵はいない』

東大卒&東大生作家による「東大ミステリ」アンソロジー!第168回直木賞を受賞した小川哲さんも東大出身ですが、結城真一郎さんや新川帆立さん、辻堂ゆめさんなどいま旬の「東大卒」作家が集結。「東大王」やQuizKnockなどが好きな方には特におすすめの、遊び心くすぐられる1冊です。

こんな人におすすめ

  • ミステリが好き
  • 東大王をよく見る
  • QuizKnockが好き
  • 東大にあこがれる
  • 好きな作家を見つけたい

東大卒&東大生作家による「東大ミステリ」アンソロジー!
収録作
「泣きたくなるほどみじめな推理」 市川憂人
1995年、憧れの従姉を失った私は、彼女の痕跡を探すため東大の文芸サークルに入った。

「アスアサ五ジ ジシンアル」 伊与原 新
地震研に突然届いた1枚のはがき。虹で地震を予知したという「ムクヒラの電報」との関連は。

「東大生のウンコを見たいか?」 新川帆立
東大卒のミステリ作家・帆立は、親友リリーとともに農学部で起きたウンコ盗難事件の犯人を探す。

「片面の恋」 辻堂ゆめ
五月祭の準備中、クラスメートの熱烈な恋を一瞬にして冷めさせた「片面」の意味とは。

「いちおう東大です」 結城真一郎
美しく完璧な妻がまっさきに提示した新居の条件は、「東大が見えるところ」だった。

「テミスの逡巡」 浅野皓生 (東大生ミステリ小説コンテスト大賞受賞作)
卒業生の医師を取材した学生メディア「UTディスカバー」のもとに、彼は人殺しだという告発状が届く。

KADOKAWA HP

以上、2023年1月の気になる新刊10選でした。
気になった1冊があれば、ぜひこの機会に手に取ってみてください!

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