目次
はじめに
第168回直木賞&芥川賞が発表された翌日1月20日に、2023年本屋大賞のノミネート作が発表されました。
そもそも「本屋大賞」とはどんな賞なのか。そして今回ノミネート10作のあらすじ&特徴と、最後に受賞予想をご紹介します!
本屋大賞とは
本屋大賞とは、「売り場からベストセラーを作る!」をスローガンに、全国の書店員の投票によって選ばれる賞です。
1次投票(1人3作品を投票)の集計の結果、上位10作品がノミネート本として発表されます。その後、約3か月の期間に全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつける2次投票をおこないます。2次投票の結果を、1位=3点、2位=2点、3位=1.5点として集計した点数によって大賞作品が決まります。
前回大賞は、逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』。2022年12月時点で、売上は50万部を突破しています。
2023年度本屋大賞の発表は、4月12日です。
候補作紹介
2023年本屋大賞ノミネートは、以下10作となりました。
青山美智子『月の立つ林で』
とあるポッドキャストが、上手くいかない人生を照らし導いて――。「月」をモチーフに日々のきらめきを掬いあげた傑作。
『お探しものは図書室まで』で2021年本屋大賞2位、『赤と青とエスキース』で2022年本屋大賞2位、と2年連続本屋大賞2位を獲得している実力派作家。かけがえのない日々のきらめきに気づかせてくれる、温かい物語を紡ぎます。
こんな人におすすめ
- ポッドキャストを聴く
- 諦められない夢がある
- 人間関係に悩んでいる
- 日々の大切さを感じたい
- 人生を見つめ直したい
長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。
ポプラ社HP
安壇美緒『ラブカは静かに弓を持つ』
著作権を侵害している証拠を掴むため、傷を抱えた美しき調査員は音楽教室に潜入する。孤独な闘い、心震えるスパイ×音楽小説。
『天龍員亜希子の日記』で2017年に第30回小説すばる新人賞を受賞。初めての本屋大賞ノミネート入りですが、本作は第25回大藪春彦賞を受賞しています。『金木犀とメテオラ』とあわせて、単行本として刊行されているのは3冊。期待の新鋭です。
こんな人におすすめ
- 楽器を習っていた
- 弦楽器の音色が好き
- スパイ小説をよく読む
- リーガルドラマが好き
- 仲間と熱くなりたい
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!
集英社HP
一穂ミチ『光のとこにいてね』
どうしてこんなにも惹かれてしまうのだろう――、女性どうしの友情でも恋愛でもない関係を描いた、愛と運命の感動傑作。
BL作家として活躍していましたが、一般文芸デビュー作『スモールワールズ』で第165回直木賞候補、2022年本屋大賞で3位に。『パラソルでパラシュート』、『砂嵐に星屑』を経て、本作は第168回直木賞候補でもありました。名前のつかない感情に丁寧に寄り添います。
こんな人におすすめ
- 直木賞候補作を読みたい
- 女子校に通っていた
- 優しい物語が好き
- BLをよく読む
- 想いを伝えたい人がいる
古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。
文藝春秋HP
詳しいレビューはこちら!↓
小川哲『君のクイズ』
生放送クイズ番組の決勝戦。まだ一文字も問題文が読まれないうちに正答を導き出した本庄絆が優勝した。ヤラセか、それとも――?おどろきの真実。
『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞を受賞してデビュー。『嘘と正典』で直木賞候補入り、「鈍器本」としても注目が集まった壮大な歴史小説『地図と拳』が第168回直木賞を受賞しました。本格SFから重厚な歴史小説、ライトなエンタメミステリまで……、多彩な天才作家です。
こんな人におすすめ
- 直木賞作家を読みたい
- QuizKnockが好き
- クイズ番組が好き
- ミステリをよく読む
- 人生を見つめ直したい
生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。読めば、クイズプレーヤーの思考と世界がまるごと体験できる。人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。そして読後、あなたの「知る」は更新される! 「不可能犯罪」を解く一気読み必至の卓抜したミステリーにして、エモーショナルなのに知的興奮に満ちた超エンターテインメント!
朝日新聞出版HP
呉勝浩『爆弾』
些細な傷害事件の取調中、中年男が爆破を予言する。「ここから三度、次は一時間後に爆発します。」警察vs爆弾魔、悪意に満ちたノンストップ・ミステリ。
『道徳の時間」で第61回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞、『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、本作も3回目の直木賞候補入りと、作家としてのキャリアを確実に積み上げています。
こんな人におすすめ
- 直木賞候補作を読みたい
- ミステリをよく読む
- サスペンスが好き
- 「無敵の人」が気になる
- 心の闇を見つめたい
東京、炎上。正義は、守れるのか。些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。警察は爆発を止めることができるのか。爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。
講談社HP
寺地はるな『川のほとりに立つ者は』
恋人が怪我をして意識が戻らない――。彼の部屋を訪ねた清瀬は、秘密が書かれたノートを見つける。心の傷つきを丁寧に掬う物語。
『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞してデビュー。河合隼雄物語賞を受賞した『水を縫う』や『今日のハチミツ、あしたの私』など心の傷つきを優しく掬う筆致でファンを魅了しています。
こんな人におすすめ
- カフェによく行く
- 大切にしたい人がいる
- 人間関係に悩んでいる
- 恋人に秘密がある
- 優しい気持ちになりたい
カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。
双葉社HP
凪良ゆう『汝、星のごとく』
惹かれ合い、すれ違い、想いをぶつけ合って成長していく――。人生のままならなさと誰かを愛する幸せ。孤独に寄り添う物語。
主にBLジャンルで活躍していましたが、『流浪の月』で2020年本屋大賞を受賞。広瀬すず×松坂桃李の豪華キャストでの映画化も話題になりました。「どこまでも世間と相いれない人たち」を丁寧に描きます。
こんな人におすすめ
- 直木賞候補作を読みたい
- 地方に住んでいる
- 瀬戸内に縁がある
- 切ない恋愛小説が好き
- 「愛」について考えたい
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
講談社HP
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
町田そのこ『宙ごはん』
産みの母と育ての母がいる生活は「さいこーにしあわせ」。ビストロで働く佐伯が教えてくれるレシピをノートに書きとめる日々。心温まる希望の物語。
「カメルーンの青い魚」(『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』収録)で第15回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。『52ヘルツのクジラたち』で2020年本屋大賞を受賞。前作『星を掬う』も本屋大賞ノミネートと、読者からの支持が厚く新刊が出るたび話題になります。
こんな人におすすめ
- 料理の描写が好き
- パンケーキをよく食べる
- 小学生の子どもがいる
- 家族を大切にしたい
- 優しい物語が好き
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
小学館HP
結城真一郎『#真相をお話しします』
私たちの日常に潜む小さな歪みをあなたは見抜けるか――?現代日本の〈いま〉とミステリの技巧の融合。奇才による5編を収録。
『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞してデビュー。本作に含まれる短編「#拡散希望」が、第74回日本推理作家協会賞を受賞しています。現代性の強い、エッジの効いたミステリに注目が集まっています。
こんな人におすすめ
- ミステリをよく読む
- 話題作を読みたい
- イヤミスが好き
- 伏線を見破る自信がある
- 不穏な空気に浸りたい
子供が四人しかいない島で、僕らは「YouTuber」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとたちがよそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)。日本の〈いま〉とミステリが禁断の融合! 緻密で大胆な構成と容赦ない「どんでん返し」の波状攻撃に瞠目せよ。日本推理作家協会賞受賞作を含む、痺れる五篇。
新潮社HP
夕木春央『方舟』
水没までのタイムリミットは1週間。地下建築に閉じ込められた9人のうち、生き残るのは果たして誰か?恐怖のラスト、衝撃作。
2019年に『絞首商会の後継人』で第60回メフィスト賞を受賞。週刊文春ミステリーベスト10国内部門1位をはじめとするミステリランキングを席巻した今作は、SNSを中心に話題になりました。
こんな人におすすめ
- 人気ミステリを読みたい
- 新本格ミステリが好き
- ホラー小説が好き
- 肝試しをよくしていた
- 最後に衝撃を感じたい
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。
講談社HP
受賞作予想
やはり新たな才能を応援したい!ということで、本屋大賞をすでに獲っている作家の作品は(作品の良し悪しにかかわらず)避けられる傾向にあるように思います。2020年大賞『流浪の月』の凪良ゆうさん、2021年大賞『52ヘルツのクジラたち』の町田そのこさんは、その点で大賞の可能性が低いかもしれません。
一方で、直木賞に惜しくも漏れた作品は応援されやすく、前回本屋大賞で3位とすでに書店員ファンがついている一穂ミチさん『光のとこにいてね』が有力なのではないでしょうか。
また、第168回直木賞を受賞した小川哲さんの、直木賞受賞作『地図と拳』とはまったく異なるジャンルの快作『君のクイズ』は万人受け間違いなしの注目作です。2回連続本屋大賞2位の実力派作家、青山美智子さんからも目が離せません。
寺地はるなさんは今回待望のノミネート入り。心を揺さぶる青春小説で話題の安壇美緒さんにも期待が高まっています。
ミステリクラスタにはたまらない「Wユウキ」(結城真一郎さん、夕木春央さん)ももちろん力作ですが、ミステリを読み慣れていない書店員さんにはハマらないかもしれません。
その一方で、同じミステリですが呉勝浩さんの『爆弾』は「爆破予告」や「無敵の人」など現代的なテーマを扱っていてリアリティがあり、幅広く支持を得そうです。
……ということで、現時点の受賞予想ベスト3はコチラ。
受賞予想:1位
一穂ミチ『光のとこにいてね』
受賞予想:2位
凪良ゆう『汝、星のごとく』
受賞予想:3位
青山美智子『月の立つ林で』
2023年度も力作揃いの本屋大賞ノミネート作。みなさんも、4月12日の発表までに10作読み切って受賞予想をしてみませんか?