目次
はじめに
2022年の1年間に刊行された小説のなかから、現役文芸編集者のおすすめベスト10を厳選!
直木賞&芥川賞、本屋大賞ノミネート作など話題作から個人的推し作品まで、多彩な10作をご紹介します。
1位: 彩瀬まる『かんむり』
かけがえのない長い時間を共にしてきたはずなのに、私たちは紛れもない他者――。夫婦の一生、そして女性の老いを描ききった渾身作。
こんな人におすすめ
- 夫婦生活に悩んでいる
- 結婚について考えたい
- 人生を見つめ直したい
- 時代についていけない
- 老いを感じている
「私たちはどうしようもなく、別々の体を生きている」夫婦。血を分けた子を持ち、同じ墓に入る二人の他人。かつては愛と体を交わし、多くの言葉を重ねたのに、今はーー。夫が何を考え、どんな指をしているのかさえわからない。「私のかんむりはどこにあるのか」。著者四年ぶり書き下ろし長編。
幻冬舎HP
2位: 小川哲『君のクイズ』
生放送クイズ番組の決勝戦。まだ一文字も問題文が読まれないうちに正答を導き出した本庄絆が優勝した。ヤラセか、それとも――?おどろきの真実。
こんな人におすすめ
- 直木賞作家を読みたい
- 本屋大賞が気になる
- QuizKnockが好き
- クイズ番組が好き
- ミステリをよく読む
生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。読めば、クイズプレーヤーの思考と世界がまるごと体験できる。人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。そして読後、あなたの「知る」は更新される! 「不可能犯罪」を解く一気読み必至の卓抜したミステリーにして、エモーショナルなのに知的興奮に満ちた超エンターテインメント!
朝日新聞出版HP
3位: 一穂ミチ『光のとこにいてね』
どうしてこんなにも惹かれてしまうのだろう――、女性どうしの友情でも恋愛でもない関係を描いた、愛と運命の感動傑作。
こんな人におすすめ
- 直木賞候補作を読みたい
- 本屋大賞が気になる
- 女子校に通っていた
- BLをよく読む
- 想いを伝えたい人がいる
古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。
文藝春秋HP
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4位: 永井みみ『ミシンと金魚』
ヘルパーのみっちゃんに向かってあたしは自分の人生をふりかえる。認知症の老人「カケイさん」の圧倒的な語りと生の充溢。
こんな人におすすめ
- 芥川賞候補作を読みたい
- 介護職についている
- 高齢者と暮らしている
- 人生を見つめ直したい
- 「死」について考えたい
「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」ある日、ヘルパーのみっちゃんから尋ねられた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が膨らみだして……。この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す号泣必至の物語です。
集英社HP
5位: 年森瑛『N/A』
高校2年生のまどかは、生理を止めるために体重を増やさない。マイノリティに貼られるラベルに抗う意欲作。
こんな人におすすめ
- 芥川賞候補作を読みたい
- 話題作を読みたい
- 女子校に通っていた
- 違和感を抱えている
- 安易な表現が嫌
松井まどか、高校2年生。うみちゃんと付き合って3か月。体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。優しさと気遣いの定型句に苛立ち、肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。
文藝春秋HP
6位: 青山美智子『月の立つ林で』
とあるポッドキャストが、上手くいかない人生を照らし導いて――。「月」をモチーフに日々のきらめきを掬いあげた傑作。
こんな人におすすめ
- ポッドキャストを聴く
- 諦められない夢がある
- 人間関係に悩んでいる
- 日々の大切さを感じたい
- 人生を見つめ直したい
長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。
ポプラ社HP
7位: 凪良ゆう『汝、星のごとく』
惹かれ合い、すれ違い、想いをぶつけ合って成長していく――。人生のままならなさと誰かを愛する幸せ。孤独に寄り添う物語。
こんな人におすすめ
- 直木賞候補作を読みたい
- 地方に住んでいる
- 瀬戸内に縁がある
- 切ない恋愛小説が好き
- 「愛」について考えたい
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
講談社HP
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
8位: 高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」。職場でのままならない人間関係を残酷なまでに描ききった話題作。
こんな人におすすめ
- 芥川賞受賞作を読みたい
- 職場にむかつく人がいる
- 実は食に興味がない
- 人間関係に悩んでいる
- 人間の心の闇を見たい
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
講談社HP
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。
9位: 呉勝浩『爆弾』
些細な傷害事件の取調中、中年男が爆破を予言する。「ここから三度、次は一時間後に爆発します。」警察vs爆弾魔、悪意に満ちたノンストップ・ミステリ。
こんな人におすすめ
- 直木賞候補作を読みたい
- 本屋大賞が気になる
- ミステリをよく読む
- サスペンスが好き
- 「無敵の人」が気になる
東京、炎上。正義は、守れるのか。些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。警察は爆発を止めることができるのか。爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。
講談社HP
10位: 金原ひとみ『デクリネゾン』
二度の離婚を経て中学生の娘と暮らすシングルマザーの小説家。恋に仕事に子育てに、尽きない欲と不安を切れ味鋭く描いた長編。
こんな人におすすめ
- 芥川賞作家を読みたい
- 思春期の子どもがいる
- 「普通」の押し付けが嫌
- モヤモヤを吐き出したい
- 強い女性に憧れている
仕事、家庭、恋愛の全てが欲しい女たちとその家族的つながりを描いた最新長編小説。二度の離婚を経て、中学生の娘である理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家、志絵。最近付き合い始めた大学生の蒼葉と一緒に暮らしたいと娘に告げるがーー。恋愛する母たちの孤独と不安と欲望が、周囲の人々を巻き込んでいく。
集英社HP
以上、現役文芸編集者の2022年おすすめ小説ベスト10でした。
気になった1冊から、ぜひチェックしてみてください!