目次
はじめに
2023年5月の新刊720冊のなかから、現役文芸編集者の気になる10冊を厳選!
直木賞受賞作から芥川賞候補作、世界的作家の新刊まで、充実のラインナップです!
オススメ作品
多和田葉子『白鶴亮翅』
ベルリンで一人暮らしをする美砂は、ある日隣人のМさんに誘われて太極拳学校に行く。歴史と文学、文化が交差する世界文学。
こんな人におすすめ
- 世界文学が読みたい
- 翻訳小説が好き
- 芥川賞作家が読みたい
- ドイツに縁がある
- 太極拳に興味がある
ベルリンで一人暮らしをする美砂。隣人Mさんは東プロイセンで生まれ、終戦前にドイツに引きあげてきた。美砂はプルーセン人の来し方を聞きながら、第二次大戦前後のドイツと日本の歴史に引き込まれ、土地からの追放、戦時の死者数、国や民族、境界について考える。ある日、Mさんに誘われて、太極拳学校に行く。ロシア人富豪のアリョーナ、お菓子づくりのベッカー、英語教師のロザリンデと共に、鶴が羽を広げるように右腕を力強く上げる太極拳の技「白鶴亮翅」を習う。美砂はクライストの短篇「ロカルノの女乞食」を翻訳する。このドイツの作家はなぜホームレスの老女に注目したのか。ハムレット、グリム童話、楢山節考、世界の名作を女性の視点から読み直してみると……。
朝日新聞出版HP
五ノ井里奈『声をあげて』
自衛隊での訓練中の性暴力。報告するも黙殺され、勇気を振り絞ってメディアに訴えた、五ノ井里奈さんの自叙伝。
こんな人におすすめ
- ノンフィクションが好き
- #MeTooを考えたい
- 性暴力について知りたい
- 女性の権利について考えたい
- 声をあげられずに悩んでいる
震災を契機に自衛官を夢見た少女は、入隊後、絶望を味わった。訓練中の性暴力を報告するも自衛隊は黙殺。そして彼女は実名・顔出しでメディアに訴えることを決意したが……日本中に勇気を与えた五ノ井里奈の物語。
小学館HP
垣根涼介『極楽征夷大将軍』
室町幕府の祖でありながら、謎に包まれた足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。第169回直木賞受賞作。
こんな人におすすめ
- 直木賞受賞作を読みたい
- 歴史小説をよく読む
- 足利尊氏が好き
- 重厚な物語を読みたい
- ミステリをよく読む
動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。
混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
文藝春秋HP
小野寺史宜『みつばの泉ちゃん』
欠点だらけ、でも正直で真っ直ぐな「泉ちゃん」が巻き起こす心揺さぶる感動作。かけがえのない出会いを描いた、20年の物語。
こんな人におすすめ
- 自分のことが好きになれない
- 短所ばかり気になってしまう
- 本を読んで癒やされたい
- 優しい気持ちになりたい
- 子どもと一緒に読みたい
自分がいやな人間だってことはもうわかってんの。わかってんのに直せないんだからダメな人間だってことも――。そう思っている片岡泉は、本人の自覚に反して出会う人に鮮やかな印象を残していく。小学生時代を知る近所の大学生も、中学の友だちも、アルバイト先の店長も、喧嘩別れした元カレも――誰もが後から、あの正直さに背中を押されていたことに気づくのだ。欠点だらけの「泉ちゃん」が巻き起こす、素晴らしき出会いの物語。
ポプラ社HP
中山七里『能面検事の死闘』
無差別殺人事件で7名を殺害し、何も失うものがない「無敵の人」と称する笹清。彼の釈放を求めて、〈ロスト・ルサンチマン〉による連続爆破事件が次々と起こる。〈ロスト・ルサンチマン〉の真の目的とは?
こんな人におすすめ
- ミステリをよく読む
- ロスジェネ世代である
- 「無敵の人」を考えたい
- リーガル小説が好き
- ハラハラドキドキしたい
南海電鉄岸和田駅にて、無差別殺人事件が発生。7名を殺害した笹清政市(32)は、自らを失うもののなにもない”無敵の人”と称する。ネット上で笹清をロスジェネ世代の被害者だと擁護する声があがるなか、大阪地検で郵送物が爆発、6名が重軽傷を負った。被疑者〈ロスト・ルサンチマン〉は笹清の釈放を求める犯行声明を出す。事件を担当する大阪地検の不破俊太郎一級検事は、調査中に次の爆発に巻き込まれ――。連続爆破事件は止められるのか? 〈ロスト・ルサンチマン〉の真の目的は何なのか?
光文社HP
若竹千佐子『かっかどるどるどぅ』
不安な毎日を送る年齢も性別もバラバラの4人は、ある不思議な女性が住む古いアパートの一室を訪れる。孤独に寄り添う感動作。
こんな人におすすめ
- 芥川賞作家を読みたい
- 『おらおらでひとりいぐも』が好き
- 孤独を感じている
- ままならない日々が不安
- 本を読んで感動したい
68万部を突破し、全国に感涙を与えた文藝賞・芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』から6年。「みんなで生きる」をテーマに据えた著者の新境地!
河出書房新社HP
恩田陸『鈍色幻視行』
呪われた小説『夜果つるところ』の関係者が集ったクルーズ旅行。小説家の梢は、取材を進めるうちにある違和感を覚えて……。
こんな人におすすめ
- 直木賞作家が読みたい
- 本屋大賞作家が読みたい
- ミステリが好き
- クルーズ船に憧れる
- 読み応えのある作品を読みたい
謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――。
集英社HP
島田雅彦『時々、慈父になる』
時は1991年、島田雅彦30歳。世界中を旅するなか、息子が生まれ、世界が一変した「はず」だった。デビュー40年の芥川賞作家による自伝的父子小説。
こんな人におすすめ
- 芥川賞作家が読みたい
- 『優しいサヨクのための嬉遊曲』が好き
- 父と息子の物語を読みたい
- 世界中を旅したい
- 子育て中である
時は1991年、島田雅彦30歳。バブルは崩壊したとは言え、執筆の他にも世界中を旅する仕事が続く中、妻の妊娠が判明する。夫は、子育てに適した新居を探し、子どもの名前を考える。「永遠に実現しない希望」を意味する弥勒菩薩からミロクと名付け、生後間もない頃から世界中へと連れ回し、家族の記憶はいつも旅の記憶。自由奔放に子どもを育てたいと思いながらも、お受験へ。入園式当日に朝帰りをしたのは、父だったからか、作家だったからか。息子が生まれ、世界が一変したはずの作家による自伝的父子小説。
集英社HP
深緑野分『空想の海』
ミステリ、SF、幻想、ホラー、児童文学まで。作家デビュー10周年を記念する11編の多彩な短編集。
こんな人におすすめ
- 色々な読み味を楽しみたい
- 好きなジャンルを見つけたい
- 短編小説が好き
- 『この本を盗む者は』が好き
- 本を読む楽しさを知りたい
奇想と探究の物語作家、デビュー10周年記念作品集!
「緑の子どもたち」
植物で覆われたその家には、使う言葉の異なる4人の子どもたちがいる。言葉が通じず、わかりあえず、でも同じ家で生きざるを得ない彼らに、ある事件が起きて――。「空へ昇る」
大地に突如として小さな穴が開き、そこから無数の土塊が天へ昇ってゆく“土塊昇天現象”。その現象をめぐる哲学者・物理学者・天文学者たちの戦いの記録と到達。ミステリ、児童文学、幻想ホラー、掌編小説 etc. 書き下ろし『この本を盗む者は』スピンオフ短編を含む、珠玉の全11編。
KADOKAWA HP
千葉雅也『エレクトリック』
1995年、高2の達也は、黎明期のインターネットを通じてゲイのコミュニティを知り、東京に憧れる。時代の転換点と揺れる父子関係を描いた意欲作。
こんな人におすすめ
- 芥川賞候補作を読みたい
- 宇都宮に縁がある
- 父と息子の物語が好き
- 90年代を懐かしみたい
- 純文学をよく読む
1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。新境地を拓く待望の最新作!
新潮社HP
以上、2023年5月の気になる新刊10選でした。
直木賞受賞作から芥川賞候補作、世界的作家の新刊まで、充実のラインナップをお楽しみください!