直木賞

【第168回直木賞】候補作を詳しく紹介!

2022年12月18日

はじめに

12月16日に、2022年下半期の直木賞の候補作が発表されました。
そもそも「直木賞」とはどんな賞なのか。
そして今回候補作5作の特徴と、最後に受賞予想+受賞作【追記】をご紹介します!

直木賞とは

エンターテインメント性のある長編小説あるいは短編小説集に与えられる文学賞です。
ジャンル不問で、新人〜中堅作家が主にノミネートされます。
芥川賞とともに、日本文学振興会(文藝春秋社)主催で年に2回開催されます。
前回受賞作は、窪美澄『夜に星を放つ』

選考委員は、浅田次郎・伊集院静・角田光代・北方謙三・桐野夏生・髙村薫・林真理子・三浦しをん・宮部みゆき各氏9名。
第168回の受賞作発表は、1月19日です。
選評と受賞作全文は『オール讀物』2023年3・4月合併号に掲載されます。

候補作紹介

第168回直木賞の候補作は、以下5作となりました。

一穂ミチ『光のとこにいてね』

どうしてこんなにも惹かれてしまうのだろう――、女性どうしの友情でも恋愛でもない関係を描いた、愛と運命の感動傑作。

もともとはBL作家として活躍。一般小説デビュー作『スモールワールズ』が話題となり、直木賞候補にも。今回で2回目の候補入りとなります。そして直木賞に惜しくも漏れた翌日、2023年本屋大賞ノミネート作として発表されました!

『スモールワールズ』は第43回吉川英治文学新人賞を受賞し、2022年本屋大賞第3位。2作目の『砂嵐に星屑』では第35回山本周五郎賞の候補になっています。

「『スモールワールズ』を超える、感動の最高傑作」と銘打たれる本作。「愛と運命」をめぐる長編物語です。

こんな人におすすめ

  • 本屋大賞が気になる
  • 女子校に通っていた
  • 優しい物語が好き
  • BLをよく読む
  • 想いを伝えたい人がいる

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。

文藝春秋HP

詳しいレビューはこちら!↓

2023年本屋大賞ノミネート作が知りたい方はこちら!↓

小川哲『地図と拳』

日露戦争前夜から第二次世界大戦まで、満州という未開拓地を舞台に繰り広げられる、壮大で深遠な歴史×空想小説スペクタクル。

第3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞しています。

『嘘と正典』が直木賞候補となり、今回で候補入りは2回目。候補作の『地図と拳』は第13回山田風太郎賞を受賞しています。

本作は第二次世界大戦までの満州を舞台に、壮大なスケールを誇る歴史小説。600ページ超えの「鈍器本」でもあります。

こんな人におすすめ

  • 歴史小説が好き
  • 壮大な物語を読みたい
  • 分厚い本に挑みたい
  • 満州に興味がある
  • 建築を専攻していた

「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。ひとつの都市が現われ、そして消えた。日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。

集英社HP

雫井脩介『クロコダイル・ティアーズ』

夫は妻によって殺されたのか、それとも――?家族であっても心までは覗けない、強まる疑心の闇を描いた濃密なサスペンス。

今年でデビュー23年目、実力派の推理作家。2004年に刊行された『犯人に告ぐ』は「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位に、第7回大藪春彦賞を受賞しています。

直木賞候補入りは本作が初。「家族×ミステリ×サスペンス」の渾身作です。

こんな人におすすめ

  • ミステリが好き
  • サスペンスをよく読む
  • 陶磁器に興味がある
  • 心理学を学びたい
  • 大家族にあこがれる

この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての恋人。被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。犯人の一言で、残された家族の間に、疑念が広がってしまう。「息子を殺したのは、あの子よ」「馬鹿を言うな。俺たちは家族じゃないか」未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐で濃密なサスペンスが誕生!

文藝春秋HP

千早茜『しろがねの葉』

戦国末期、天才山師に拾われた少女は石見銀山の坑道で働き出す。生の限界を描いた、著者初の時代小説。

小説すばる新人賞を受賞してデビュー。『魚神』は第37回泉鏡花文学賞を受賞。2013年刊行の『あとかた』、2014年刊行の『男ともだち』で直木賞候補に。今作が3回目の候補入りとなります。

女性の生きづらさやさまざまな恋愛のかたちを描いてきた著者ですが、今作は初の時代小説でノミネートとなりました。

こんな人におすすめ

  • 大河小説が好き
  • 島根に縁がある
  • 歴史小説をよく読む
  • 成長物語が好き
  • 性愛について考えたい

戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

新潮社HP

凪良ゆう『汝、星のごとく』

二人は惹かれ合い、すれ違い、そして想いをぶつけ合って成長していく。瀬戸内の島を舞台に描かれる、孤独に寄り添う愛の物語。

もともとは主にBL作家としてで活動していましたが、『流浪の月』で2020年本屋大賞を受賞して一気に人気作家になりました。そして直木賞に惜しくも漏れた翌日、2023年本屋大賞ノミネート作として発表されました!

いわゆる「文学賞」を受賞したことはまだなく、直木賞も今回が初の候補入りとなります。恋とも愛ともつかない濃密な男女の関係を描いた『流浪の月』につづく本作も、孤独に寄り添う物語です。

こんな人におすすめ

  • 本屋大賞作家を読みたい
  • 本屋大賞が気になる
  • 恋愛小説が好き
  • 地方に住んでいる
  • 「愛」について考えたい

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

講談社HP

2023年本屋大賞ノミネート作が知りたい方はこちら!↓

受賞作予想

現時点でまだ2作しか読めていませんが……、実力的には雫井脩介さんの『クロコダイル・ティアーズ』が強力なのではないでしょうか。

BLジャンル出身の一穂ミチさん、凪良ゆうさんも期待されますが、受賞にはまだ少しはやい気も。5作すべて読み終えたら、改めて受賞予想記事を出します。お楽しみに!

受賞作決定【追記】

小川哲『地図と拳』

千早茜『しろがねの葉』

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